親の年金収入がごくわずかで、預貯金もほとんどないようなケースがあります。何とか仕送りをして親の生計を支えていたような場合でも、必ずしもそれを継続できるとは限りません。例えば、子がリストラされたり、定年退職を迎えて月々の収入が激減してしまうことも考えられます。

結論
セーフティネットとしての生活保護
そのような場合は、思い詰める前に親への「生活保護」の申請を検討しましょう。生活保護とは、生活に困窮する人に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護をし、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、自立を助けることを目的としています。
相談・申請は、親の暮らす自治体の福祉事務所に行います。本人か家族が申請します。相談に行けば、「あなたが親の世話をしなさい」と言われるのでは……と不安でしょうか。確かに、担当者によってはそういう言い方をするかもしれませんが、しっかり実情を説明しましょう。実際、親の生活保護を申請している子は大勢います。
申請が通ると、子のところに「金銭的援助ができませんか?」と問い合わせが来ます。難しい場合は、再度事情を伝えます。確かに、子は親に対して扶養義務を負っていますが、それは未成年の子を監護教育する義務とは違い、自分たちの生活を維持した上で、かつ親の面倒をみるだけのゆとりがある場合に発生するもの。自分たちの生活を犠牲にしてまで、親の経済的支援をすることは求められていません。
解説
医療や介護の費用は大幅軽減
生活保護で保障されるのは、月々の生活費だけではありません。例えば、福祉事務所に相談すれば「医療券」が発行され、受診時に持参すれば医療費は免除されます。また、介護費用も扶助対象となっています。月々にかかる費用は大幅に軽減されることになります。
生活保護で受けられる8つの扶助
生活扶助
飲食費、水道光熱費、介護保険料など
住宅扶助
家賃、住居補修費など。定められた範囲内で実費を支給
教育扶助
子どもが教育を受けるための扶助
医療扶助
費用の本人負担なし
介護扶助
要支援・要介護と認定され、生活が困窮している人への扶助。費用の本人負担なし。
出産扶助
出産時に現金で支給
生業扶助
就労準備のための扶助
葬祭扶助
葬祭に必要な費用を、定められた範囲内で実費を支給
参照:「親が倒れた! 親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと 第2版」