有料老人ホームを運営するには、設備や広さなど法律で基準が定められており、都道府県へ届けを行う必要があります。しかし、必要な基準を満たさずに無届けで運営する高齢者施設も存在します。事故が発生したり、虐待していても行政が気づかないという構造に。実際、ベッドに体を固定した「身体拘束」状態の高齢者が多数で暮らす都内のマンションが問題視された報道もありました。
結論
高齢者施設は玉石混合だと理解しよう
原則、「身体拘束」は虐待です。とはいえ、有料老人ホームは高額で入れない、特別養護老人ホームは待機中という現状のなか、無届けの施設が「必要悪」として存在している面もあります。
もちろん、無届けの施設がすべて悪いわけではなく、玉石混合だと理解しましょう。なかには、高い理念があり、制度に当てはめることが難しいために無届けとなっている施設もあります。
解説
「お泊りデイ」というシステムも制度外
介護保険法に基づいたデイサービスに加えて、その利用者を対象に、夜間に介護保険適用外の宿泊サービスを提供する「お泊りデイ」という事業形態があります(「宿泊サービス」と呼ぶところも)。2015年に国のガイドラインができ、都道府県(または市区町村)への届け出義務があります。宿泊費は1泊1000〜3000円程度。別途食費が1000円ほどのところが多いようです。デイサービス利用者を取り込むための営業ツールとして行われている面もあります。
利用者側も特別養護老人ホームの待機場所として重宝し、長期利用するケースもあります。
利用を検討する場合は、内容をしっかり確認しましょう。都道府県や自治体によっては人員などの指定基準を設けています。介護サービス全般にいえることですが、ケアに人件費がかかるのは当然なのに、あまりに安価なところは注意が必要です。
とはいえ、切羽詰まると不安を抱えつつも利用せざるをえないケースも出てくるのが実情です。切羽詰まる前に、地域にどのようなサービスや施設があるのか確認しておくことが大切です。
「住宅型有料老人ホーム」は人員基準なし
高齢者虐待などの報道に接すると、「やはり、届け出をしている有料老人ホームにしよう」と考える人も多いかもしれません。ここでも、注意が必要です。届けを出していても安心とは言い切れないと思います。実際、入居者が不審死を遂げるという悲惨な事件を起こした有料老人ホームもありました。
それに、あまり知られていませんが、住宅型有料老人ホームには人員基準はありません。サービスへのニーズは入居者によって異なるため、必要なサービスは、各自が外部の訪問介護事業所から受ける、という考え方なのです。
介護度が低いときは「必要な分だけ」サービスを受けられるのはメリットだといえるでしょう。しかし、介護度が重くなると介護費用が高騰する可能性があります。たまに、住宅型なのに「介護付き」と勘違いして選択してしまい、「介護をしてくれないひどい施設だ」と嘆く声を聞くことがあります。
結局は、個別に見学をして、親のニーズに合うかどうか、しっかり確認・検討するしかないといえるでしょう。
参照:「親が倒れた! 親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと 第2版」