親が元気なときに住み替えるのであれば、親の意思で「住みたい場所」にある施設を選ぶでしょう。けれども、入院・介護が必要になってから施設を選ぶ場合、子が主導しなければならないこともあります。在宅介護ができず、施設を選ばざるをえないケースもあるからです。
結論
実家の近くか、自分の家の近くか
親と同居、もしくは近居のケースでは、「近所」が選択肢となるでしょう。では、遠距離に暮らしている場合は?たいていは、「親の家の近く」か「子の家の近く」のどちらがいいかと悩みます。
親の家の近くの施設なら、親は馴染みやすいかもしれません。方言や食事の味付けも気にならないでしょう。屋外には見慣れた風景があり、通院中の病院も変えなくていい。しかし、子が通っていくには時間と交通費がかかります。介護が必要となると、たとえ施設に入居しても、体調の変化などで「すぐ、来てください」と施設からお呼びがかかり、病院に連れていかなければならない事態も起こります。
解説
特別養護老人ホームなら親の自宅のそば
特別養護老人ホームは、全国どこでも申し込むことができます。けれども、住民票のあるお年寄りを優先する傾向があります。そういう意味では、親の暮らす家の近くがベターかもしれません。
また、介護の必要な状態となっても、できる限り住み慣れた自宅や地域で生活を継続できるよう、市区町村が主体となって提供する「地域密着型サービス」というものがあります。「地域密着型」に分類されている施設では、原則、施設の市区町村に居住している高齢者が対象です。
どこを選ぶかは、正解のない難しいテーマですが、家族それぞれのメリット・デメリットを検討して、判断力がある状況なら親の意向をしっかり聞きましょう。そこで暮らすのは、子ではなく親です。意思に反する移動は、心身状態の悪化につながる場合もあります。くれぐれも慎重に。実際には、親の近くの施設を選び、ときどき通って様子を確認する「遠距離介護」を選択するケースが多く見られます。
参照:「親が倒れた! 親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと 第2版」