
離れた親の認知症介護を7年も続けていると、驚くようなトラブルが次々と起こります。例えば、わたしがいない間に、母が町内会の班長になっていたときは本当に驚きました。回覧板が回ってこないことに気づいたご近所さんやヘルパーさんの報告で解決したのですが、そのときに町内会・民生委員の役割や、見守りのありがたさを知りました。わたしの高校時代の同級生と名乗る人物が家に来て、応対した母が牛乳の宅配契約を結んでしまい、慌てて契約を取り消しました。このときに、訪問販売の怖さを体感しました。亡くなった認知症の祖母が子宮頸がんで緊急入院したとき、祖母の銀行口座がどこにあるか分からず、お金の工面に苦労しました。家庭裁判所へ申し立てを行い、自ら成年後見人となって、近所の銀行にあった祖母の財産を見つけました。成年後見制度の大変さを知ったのは、このときです。要介護認定に立ち会えず、調査員から母は認知症ではないと誤解されたり、交通費節約のために高速バスを利用して疲弊したりもしました。認知症介護で起こる日常は、本当に驚くことばかりで、最初は介護者も受け入れられないことが多いと思います。次第に様々なことができなくなっていく親の姿を見て落ち込み、悩む介護者はたくさんいます。しかし、認知症の親に対して、多くを求めないことで、離れて暮らす親の認知症介護が少しだけラクになります。具体的には、親が病気やケガをせず、元気で生きていてくれさえすればいいと考えられるようになると、こうした認知症に関するトラブルに対しても、目をつむることができます。これだけのことがあっても、わたしは通いの介護を続けたいと思っています。
参照:「親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと」