健康保険・介護保険の保険料、介護保険の自己負担額などは、世帯所得によって決められているものがあります。働き盛りの子が同じ世帯に暮らしていると、その親の年金収入はわずかでも課税世帯の一員ということで、これらの料金が高くなってしまうのです。そこで、同じ屋根の下に暮らしていても「世帯分離」をして、親を「非課税世帯」にするという方法が考えられます。
結論
世帯を分けることで介護の金銭負担が軽減
世帯分離とは、住民票上の現在の世帯から世帯員の一部を分離し、世帯を分ける手続きです。「世帯変更届」を役所に提出します。「生計が一」かどうかの判断はあいまいな面もあるため、同じ屋根の下に暮らしていても認められる場合があります(自治体によって対応は異なる)。
解説
年金収入だけの親で、住民税が非課税となるには・・・
65歳以上で配偶者がいない
⇒公的年金等収入金額が155万円以下(1年間)
155万円 ー 120万円(年金控除)= 35万円(所得金額)
65歳以上で配偶者がいる
⇒公的年金等収入金額が211万円以下(1年間)
211万円 ー 120万円(年金控除)= 91万円(所得金額)
※ただし、前年の合憲所得金額が各地方自治体の定める額以下であること。例えば東京23区では、扶養なしの場合の35万円。扶養ありの場合は35万円×(本人・扶養者・控除対象配偶者の合計数)+21万円
どれくらい負担軽減できるか
では、実際に世帯分離するか、しないかで、どの程度負担は変わるのでしょうか。次図は、会社員である長男夫婦と同居する82歳の母親のケースです。年金は国民年金だけですが、長男と同じ世帯だと「課税世帯の高齢者」という扱いに。そのため、介護保険料については、単独世帯と比較して2倍近い額となっています。
また、この母親が老人保健施設に入居するとしましょう。次のように、世帯分離後では、「居住費」「食費」の軽減措置により、負担は半減します(ただし、所得が低くても1000万円以上の預貯金がある場合は対象外。さらに、世帯分離している夫婦の場合でも、配偶者の所得や預貯金も判断材料となる)。
参照:「親が倒れた! 親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと 第2版」