親の年金がわずかで、年金以外の収入や蓄えがなければ、所得によって軽減制度のある介護保険の施設(特別養護老人ホーム・老人保健施設・介護療養型医療施設・介護医療院)が選択肢となるでしょう。では、どれほどの軽減があるのでしょうか。
結論
介護保険施設は国民年金の親は月約6万円〜
これらの施設サービスを利用する際には、「施設サービス費の1割(または2割、3割)+居住費+食費+日常生活費」が自己負担となります。
所得が低い場合には、施設利用が困難とならないように「特定入所者介護サービス費」という制度があります。実際にかかった負担額と、所得によって決められた負担限度額の差額分を市区町村が施設に支払うことで、利用者の負担を軽減するものです。
例えば、要介護4の親が特別養護老人ホーム(大部屋)を利用するとしましょう。軽減がなければ、居住費1日840円、食費1日1380円が必要で、あわせて月7万円近くになります。施設サービス費用約2万3000円を足して日常生活費を払うと10万円を超えます。
一方、年金がわずかで預貯金が1000万円未満であれば、居住費1日370円、食費1日390円、さらに施設サービス費も軽減されるので、日常生活費や各種加算額を足しても月6万円ほど。介護費や食費も含んだ額なので、介護保険施設の人気が高いのは当然だといえるでしょう。
解説
役所の介護保険課に申請
対象となるのは、特別養護老人ホーム、老人保健施設、介護療養型医療施設、介護医療院の入居者とショートステイの利用者。デイサービスやグループホーム、小規模多機能型居宅介護は対象外です。
負担額の減額認定を受けるには、役所の介護保険の担当窓口に申請して「介護保険負担限度額認定証」の交付を受け、施設利用時に提示します。詳細は、役所の介護保険担当窓口や地域包括支援センターで相談しましょう。
今後の制度変更にも留意が必要
施設での生活は、長期にわたる可能性もあります。国の社会保障費の増大もあり、制度はどんどん変更しています。例えば、「居住費」「食費」の軽減には所得が低いことの他に、預貯金などが単身は1000万円以下、夫婦は2000万円以下であるかが問われます。この条件は2015年8月から新たに加わったものです。さらに、2016年8月からは、利用者負担額を決める判定に、遺族年金・障害年金も含めるよう見直しが行われました。
今後も、制度はより厳しい方向に向かうことは確実です。入居後の制度変更もありえるので、ゆとりを持った資金計画が必要です。
参照:「親が倒れた! 親の入院・介護ですぐやること・考えること・お金のこと 第2版」